破産を決意したそのとき、求めたのは「フルタイムで働ける場所」
自己破産を決意した時点で、事業の継続は断念せざるを得なくなりました。それは同時に、これまでの主な収入源が完全に絶たれるということを意味します。
飲食店でのアルバイトは続けていましたが、時給ベースの月8万円程度の収入では、とても生活を支えることはできません。
ここからはフルタイムで安定した収入を得られる仕事を探すフェーズに突入しました。
アルバイトとの並走で就活──最初の就職先は5日で退職
ネットの求人サイトやハローワークを駆使して、仕事を探す毎日。そんな中、家からすぐ近くにある物流系企業の事務職に応募し、面接後すぐに採用が決まりました。
「これでようやく落ち着けるかもしれない」
そう思ったのも束の間、ここでの現実は厳しいものでした。
職場は中高年の女性社員ばかりで、男ひとりの身分では少し肩身が狭い思いです。
ところがこの職場の初日、研修(という名の行事)が行われましたが、実務的な研修ではなく創業社長を絶賛するビデオを見せられただけ。
業務マニュアルもなく、研修初日の午後に隣で作業を見せられただけで、翌日から“ひとりでやってみてください”と言われる始末。
初日に隣で見ていた業務は次々と流れていくため、必死で書いた仕事メモは所々しか記録できておらず全く役にたたず。
慣れないオペレーションに苦戦し、質問に行けば「昨日教えましたよね?」と露骨に冷たい反応。
こんなことが一日中続きます。パソコンの前に座り続けることがだんだん怖くなりました。
60歳、メンタルやられる…

自分はこれまで会社を経営し、困難も乗り越えてきたというある種の“メンタルの自信”がありましたが、それをあっけなく打ち砕かれるような数日間。
ずぶとく人生を生きてきたつもりの60男のメンタルがたった数日で完全に壊れました。
毎朝「もう行きたくない…」辛く情けない思いがあふれてきます。
勤務5日目の朝、意を決してフロア責任者に退職を告げました。
いくら自己破産するといってもお金より大事なものがある。自分が完全に壊れる前に逃げなければならない。
そう実感したのです。
再びゼロからの就活──資格を活かせる仕事、でも…
そこからまた、再びの就職活動が始まりました。
ある日、派遣会社が出していた「ショップスタッフ」の求人に目がとまりました。持っている資格を活かせる職種で、しかも高時給。「これだ」と思い、すぐに応募しWEB面接へ。
その後、担当から条件面でのすり合わせなどで幾度か電話連絡があり、その雰囲気から「なんかいい手ごたえだ」と期待が膨らみました。
というのも、これまでほとんどの応募先企業で「不採用」の連絡はありませんでした。要は(1週間たってもこちらからの連絡が無ければ不採用だと察してください)ということなのだと思います。
このように、条件面での連絡が何度もあるということは選考は進んでるんだと感じました。
ある日の電話です。「残念ながら他の方に決まってしまいました」聞いた瞬間心がガラガラ崩れました。
「そうか、またか…」
落胆した私に担当は続けて言いました。
転機──「経営の経験、活かせますよね?」
「別件ですが、こちらの母体企業で経理事務をできる方を探していまして。〇〇さん、会社を経営されてたご経験があるなら、経理業務もできますよね?」
その紹介先は、誰もが知る上場企業!

快諾するとすぐに職場見学の場が設定され、ありがたいことに採用が決まりました。
今、ここで働けている奇跡
紹介された経理職は、自分のパソコンスキルや経理知識を存分に活かせる仕事でした。
VBAやプログラムを組んで財務資料をカスタマイズし効率化を進めるなどの他、もちろん雑用雑務も喜んでやらせていただいてます。
そして何より驚いたのは職場の雰囲気。
年下の社員がほとんどを占めているのに、とても丁寧に迎え入れてくれて、風通しが良い環境だったのです。
今、自分はこの職場で働きながら、破産という人生の谷を這い上がる途中なのに何か不思議な「縁」を感じ、「私はなんて運が良いんだろう」としみじみ喜びを噛みしめています。
これを書いている時点ではまだ破産手続きの最中なのでどんな結果が待っているかわかりません。
けれど、その経験があったからこそ得られた出会いや再出発がある。そう思える今があるだけで、十分すぎるほどの幸運だと感じているのです。
ここまで私が再就職に至った経緯をお話してきました。
ここでは十分に語りませんでしたが、たくさん応募してきた中で私が履歴書や職務経歴書などを書く際に気を付けたこと。
さらに面接では、聞かれる内容についてあるパターンがあることが分かった経緯から、面接での臨み方の注意点などのコンテンツを書いていきたいと思います。