まずは何か仕事を探さなければ…
倒産を決意する半年前、本業だったネット通販事業はすっかり勢いを失い、日中の仕事もまばらになっていました。
会社の口座は底をつき始め、それでも税金や経費の出費が減るわけでもありません。これら出費を補うためと、自分の生活費のためにカードローンにも手を出し、返済が次々と覆いかぶさってくる日々。
「このままいくといつかは終わってしまう」という不安がじわじわと現実味を帯びてきたころでした。
それでも当時の私は、**「売上落ち込みの外的要因はもうすぐ解消されるという噂だし、ネットの注文が戻ってきさえすればまだやれる」という淡い希望をどこかに持っていました。
なのでこの段階では正社員としての仕事探しではなく、とりあえず「副収入を得るためのアルバイト」**という方向で探し始めたのです。
なぜ、イタリアンレストランに?
以前の記事に書いたように、最初のアルバイト応募は近くにあったイタリアンレストランでした。
いま読んでくれてる方からすれば「町工場をやっていた人間がよりによってなぜイタリアンレストラン?」と思われるかもしれません。
その答えは、**「もう一つの人生への憧れ」**にありました。
私は昔から料理を作るのが好きで、休日には自分で作った料理を友人や親戚にふるまうのが楽しみでした。
日々の経営と業務をこなしながら「もし生まれ変わったら、フランスやイタリアで料理修行をしたい」などという叶わぬ夢、というか無駄な妄想を抱きながら生きてきたのです。
そんな思いもあって、「逆にこんな時だから憧れた世界に行ってみるのもいいかも」とレストランの応募に至ったわけです。
ほんのちょっとで良いから自分の「もう一つの人生」に触れてみたいという気持ちがありました。
しかし残念ながら結果的にそこは不採用でした。
のちに高級フレンチレストランにも挑む
話はいったん前後します。
下のほうに書いたアルバイト生活すること数か月後、レストランの道が諦めきれず、無謀にも都心の有名フランス料理店に応募。
格式高いレストランの社長はそれでも私の話を真摯に聞いてくださり、「うちは年齢は関係ない。スキルとやる気があるなら一度店に立ってみるか?」と、試用日の提案までいただきました。
残念ながらタイミング悪く、というかその後の破産を決めたことによって、その手続き等時間が取れる状況で無くなったために辞退することにしました。
ハイレベルなレストランで仕事をするとなると当然ハイレベルなクオリティが必要です。本腰入れてやらなければお店にもお客様にも失礼です。このゴタゴタした状況でやるのは無理だと判断したのです。
当時のレストランの社長にはあれほど暖かい言葉を掛けていただいたのに、今でも申し訳ない気持ちでいっぱいです。
とにかく何かアルバイトを
時間は戻って最初のイタリアンレストランを不採用になった私は、「今日にでもゼニ稼がないとヤバい」というところまで追いつめられています。
一般的に飲食系は人手が欲しいのではないかと思い、近所にお店がある全国展開の某飲食チェーンに応募しました。
面接に行ってみて初めて分かりましたが、ここはなんと高校時代の部活の後輩が社長を務めている会社。これには正直一瞬ためらいを感じましたが、背に腹はかえられず就業を決意しました。
飲食店の仕事はハード。1か月ももたないのでは
飲食の現場は想像以上にハードです。とくにそのお店は繁盛店で、お昼・夕食時そして土日は津波のようにお客様が来られます。
そして職場の先輩ははるか年下の高校生や主婦の方々。就業してしばらくの間はけっこう当たりがキツかったというのが本音です。60歳を越えたオッサンが入ってきたとなったら、普通「こいつ使えるんかいな?」と思うのは当然でしょう。
足手まといにならないようテキパキ動き、明るく返事をし、それでもいつも怒られながら通い詰めました。

キツい仕事も徐々に慣れ始める
ただ私は工場経営の時代には営業回りをやっていましたし、店頭販売で接客もこなしていました。なので人と触れることは得意だったので、その意味では気後れすることなくホール業務もこなすことができました。
夜10時を過ぎて家に帰ればくたくた。夕食を詰め込んでバタンキューの毎日が続きます。
こんな必死のアルバイトでしたが、続けるうちにだんだん仕事にも慣れ、時々レジ精算の際、研修中の名札を見たお客様から「がんばってくださいね」と声をかけてくださったりすることが励みになっていきました。
この時期の仕事探しは、あらためて人生の「修行」だった
この時期のアルバイトは赤字補填のためなりふり構わずにチャレンジしたという感じでした。
やはり60歳という自分の年齢は強く自覚しており、そもそも採用してもらうことがとても難しい年齢です。「雇ってもらえるだけ儲けもの」の精神で半ば死に物狂いでした。
その中で体力的にはきつかったですが、飲食の仕事で雇ってもらったことはラッキーだったと思います。
そして年下の人々に「使われる」ことを経験したことはとても良い経験となりその後の糧になりました。
振り返ってみれば、このタイミングで飲食業の厳しさや、立場が変わることの難しさ、そしてそれを受け入れて働くことの強さを学べたことは、今の自分にとって貴重な経験で「やって良かった」と素直に思います。
次は「副業としてのアルバイト」ではなく、破産により事業停止になったことで「フルタイムの仕事を探す」ことが必要になった流れを書いていきます。